こんにちは。suginorlです。(おすすめしたい理由だけ見たい人は最後の段落までとばしてください!)

私の肩書きはエンジニアです。今もITの現場にいます。

この業界では、モノづくりへのこだわりが、他部署や他のエンジニアとの摩擦や衝突を生み、場合によっては現場を去るケースをよく聞きますし、実際私も何度か目にしてきました。

経営の方向性と、エンジニアの「いいもの」を作りたいという思いが衝突することはよくあります。非常にざっくり言うと、経営から見れば、「見た目が同じでとにかく動いて期限内に作ってくれればいい」のに対して、エンジニアとしては「メンテナンス性や拡張性が高く、堅牢でシンプルなもの」など、できるだけいいものを作りたいと考えたりします。

おそらく多くのエンジニアの方が、経営の言う通りに動く「歯車」になってしまうのか、それとも頑固な「職人」でいるのかの間で悩んだことがあるのではないかなと私は思っています。

そんな方に一つの視点を与えるのが、伊丹十三監督の映画「スーパーの女」です。

顧客 VS 職人を描いた作品

「スーパーの女」の舞台は、郊外にあるスーパー「正直屋」。ストーリーは、この正直屋の近所に店をオープンさせ、さらに買収の話まで持ち掛けてくるスーパー「安売り大魔王」に立ち向かう内容になっています。

正直屋の専務である五郎が、「安売り大魔王」偵察中に、幼馴染の花子と偶然再会します。五郎は、現役の主婦でスーパーに対して鋭い分析力をもつ花子に店の立て直しを要請。最初は店内で厄介者扱いされていた花子でしたが、「お客様を裏切らないこと」を徹底し、顧客を少しずつ取り戻していく花子に、周囲も理解も少しずつ深まっていきます。

どのような施策を施すのか、そして正直屋がどうなるのかは、ぜひ本編をご覧いただければと思います。

上記の通り、物語全体としては、競合店に価格ではなく、顧客との信頼関係でもって勝利を勝ち取ろうという内容なのですが、店内でのやりとりは、「(素人の)顧客 VS 職人」の構図で描かれています。

例えば、鮮魚部のチーフは、魚屋出身でプライドが高く、刺身をほかの人に作らせません。当然生産性は下がります。また、品出しはしても値札の貼り替えは「俺らの仕事じゃない」といってやらず、結局クレームになってしまいます。

完全に経営目線で職人を見た内容

このように、作品ではスーパーという現場、つまり流れ作業や数字が重視される現場での「職人」の存在をかなり否定的に見る内容になっています。

私が非常に印象に残っているのは鮮魚部チーフと花子(この時点で副店長)のやりとりです。

「スーパー必要なのは職人ではなく技術者であり、スーパーに職人はいらない」

職人を否定するものではないといいつつも、花子はこう言い切ります。

そして、売り場に出ると、いけす(水槽)が撤去されています。それをみたチーフはやけくそになり、かざりつけのガラスだまなどをたたき割ります。

 

さらに、職人がその技術を悪用して不正をはたらくといったことも描かれています。

たとえば、鮮魚部では、消費期限切れの魚を再度値札を張り替えて売る「リパック」(今では考えられませんが)を行っていました。

同じようなことは精肉部でも起きており、やはり自分の気に入らない仕事をやらない人がチーフをしており、外国産の肉を混ぜて「和牛」と偽って販売したり、購入した牛肉を横流しして利益を得たりしています。

この映画の公開は1996年、食品偽装問題は2000年代にとりだたされることになりますので、この話題を映画化した伊丹十三には先見の目があったと言わざるを得ませんが、少なくとも作中、職人は限りなく悪人に近い形で描かれています。

おすすめしたい理由:職人=美の自覚

最初に申し上げました通り、多くのエンジニアの方は、「歯車」と「職人」の絶妙なバランスの上で仕事をされていて、故の苦悩があるのではないかと考えています。

そんな人に、「職人」をある意味全否定するような映画をおすすめする理由は何なのか、それはその逆を考えてみるとわかりやすいです。

「スーパーの女」の逆、つまり職人や熟練者が知恵を出し、流れ作業による圧倒的な生産力や資金力を誇る集団に勝つ。。。そんなストーリーについてです。

実はそういう「職人がすごい」系の話は世の中にゴロゴロ転がっています。その多くが「ドキュメント」として、実話をもとに構成された話です。

どうやら私たちは、メディアや武勇伝などの形で、「優れた技術をもつ個人が、多少とがった性格でも、大きな成果を上げて、ステレオタイプの集団に打ち勝つ」ストーリーに美意識を感じる傾向があるようです。

その逆、とがった職人を排除して整然とした生産体制を整え、顧客のために品質を向上してコストを下げるといった話はあまり聞きません。理由は簡単で、面白くないからです。

「スーパーの女」は消費者に身近な問題を取り扱ったことや、あくまで主題は競合店との対立の構図で描いたこと、そして何より秀逸な脚本と優秀な俳優たちのおかげで、面白く見れるようにはなっていますが、上述のように、ビジネスを円滑に進めたときに生じる、とがった職人の見え方と影響を、かなり生々しく描いている、数少ない作品のように思います。

いうまでもなく、組織では、互いの強みを活かしあいながら発展していくことが重要です。そのためにも、非常に極端ではありますが、この映画で表現されている視点を理解することに損はないと私は思っています。

冒頭に述べた、「歯車」と「職人」で悩んでいる方は、ぜひこの作品を見て新しい視点を手に入れてみてください。そうすることで、「歯車」でも「職人」でもない、組織に原動力としての新たなエンジニアの道が開けるのではないかと思っています。

それでは、また後日。

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